熊野古道を歩く
松尾良輔
熊野はもう秋。オゾンいっぱいの小径を歩く。
ところどころ青い柿の実やいが栗の落ちた径は、
身近な環境にはない夢のような世界であった。
いにしえの人達が蟻の熊野詣でに、命を懸けて歩いたであろうことを
思い浮かべながら、一歩一歩踏みしめていった。
普段が普段だから、ふくらはぎの負担はただものではなかった。
帰ってからも、長らくこの苦しみと歓びを思い出させてくれた。
それでも、
この径をまた一度も二度も来てみたいと
しみじみ思う熊野古道であった。